こんにちは。京都府を拠点として新築やリフォーム・リノベーション工事、不動産売買を手掛けている株式会社美家です。
かつて日本では、木や土など身の回りにあるものを使って建築をつくっていました。
柱や梁には地元の山で採った材を使い、壁は小舞(こまい)という竹を細く割いてメッシュのような下地をつくって、そのうえに土を塗り重ねるというのが一般的なつくり方だったのです。
こうした土壁(左官壁)は日本の豊かな建築文化の象徴。また調湿性にはじまる優れた機能が近年見直されています。ただし土壁はどれほど丁寧に仕上げられていても、必ずいつかは劣化するもの。劣化した土壁はDIYで直せるものなのでしょうか?
今回は土壁のリフォーム方法や費用相場を紹介します。
■そもそも土壁ってどんなもの?
土壁(左官壁)は壁下地の上に土などの自然素材を塗って仕上げた壁のことで、自然素材の優しさと快適さを併せ持つ空間をつくることができます。
なかでもポピュラーなのは、漆喰や珪藻土。
いずれも厚めに塗ると調湿性や蓄熱性が期待でき、湿気や室温の面から夏は涼しく冬は温かく過ごせる空間をつくれます。
漆喰は消石灰をベースにした日本古来の塗り壁材のことで、強アルカリ性による抗菌・消臭効果も特徴です。
珪藻土は藻類の一種である珪藻の殻が堆積した化岩石が原料で、多孔質であるため優れた調湿性を発揮。吸音・消臭・自浄効果も実証されています。
また昔ながらに地元の土を使って独自に調合した壁も、京都の町家や古民家には多く残っています。
土壁は仕上げの幅も広く、フラットでモダンな表情にしたり、テクスチュアをつけたり、櫛やハケなどで模様をつけることも可能。
色も好みに調合することができ、赤や青、黄、黒などの色土(顔料)を加えることで、オンリーワンの壁の色をつくれます。
■お手入れできていない土壁はどうなる?
土壁は経年変化によりヒビが入ったり、変色したりすることがあります。詳しく状態を見ていきましょう。
・ヒビ割れが多数できてしまう
土壁は乾燥・収縮により、経年でヒビが入ることがあります。軽微なヒビなら問題はありませんが、たくさんヒビが入ったり、ヒビが大きかったりすると、雨水の侵入を招いてしまうことも。場合によっては壁の内部で腐食が進むというリスクもあります。
・ポロポロと土が剥落する
左官はつなぎとして糊を加えます。昔ながらの方法では、海藻を煮出した糊を使っていましたが、現代では樹脂が使われていることが一般的。この樹脂が劣化して、土がポロポロと剥落することがあります。掃除機をかけたりするたびに土が剥落したり、荒れた表面にストッキングがひっかかって伝線するなど日常生活で不自由が生じるので、早めのリフォームが必要です。
・壁の色が変化している
漆喰は抜けるような白さに特長がありますが、全体的に黄ばんだり黒ずんだりしている場合は、経年劣化が進んでいる可能性があります。
また漆喰が強アルカリ性の性質をもち、一般的にはカビの繁殖を防ぐ効果があると言われているのに対し、珪藻土そのものにはカビを抑制する効果はありません。
漆喰や珪藻土がカビの原因となる水分を調湿する性能が高いのは事実ですが、換気を怠って吸い込んだ水分を吐き出させない環境だと、壁の内部に水分をためこんだままになってしまい、カビの繁殖を招いてしまいます。
■土壁のリフォームはDIYできる?
直したいのは、うっかりついた汚れか、あるいは長年にわたり蓄積されたダメージなのかで、DIYできるか否かは変わってきます。
・日常的な軽い汚れやヒビの場合はDIYでも大丈夫
漆喰はモノが壁にこすれてついたような、ちょっとした汚れなら消しゴムをかけて消すことができます。また珪藻土には自浄作用があるので、ワインが跳ねたような軽い汚れなら、数日できれいになることも。ホウキやハタキをかけたり、スポンジで優しくこすって淡い汚れを落とすこともできます。
軽微なヒビなら、スプレーで水をかけて、ヒビに沿ってゆっくりと筆でなぞって直すこともできます。
・軽いお手入れ以上のDIYは素人では難しい
ホームセンターで補修剤やパテなどの道具を買い、重ね塗りなどで補修することはできますが、ヒビの数が多かったり、ヒビが深く入っていたりするようなら、DIYはおすすめしません。結局、塗装作業がうまくいかずに、仕上がりは汚く、徒労に終わってしまいます。
また土壁はペンキのような塗料とは異なるので、広い面積を全面的に塗り替えるのは、左官職人のような高い技術力が必要です。
したがって、古民家や町家のリノベーションを手掛けているような、土壁の扱いに慣れた業者に依頼するのが、結果としてコストパフォーマンスがよいということが、多々あります。
■土壁のリフォームの方法は?
左官壁を全面的にきれいにしたい場合、リフォーム方法には、2つのパターンがあります。
まず一つが、塗り直して同じ左官仕上げにすること、もう一つが上からクロスを張って仕上げそのものを変えてしまう方法です。
・クロス張りに変更する
手軽でローコストなのが、土壁の上にクロスを張るという方法です。
一般的には土壁の凹凸をパテで平らにならし、直接クロスを張っていきます。ただし土壁のダメージが大きい場合は補修しきれず、土壁の凸凹が影となってクロスに現れてしまうことがあります。凹凸のせいできれいにクロスを張れないと、クロスが剥がれやすくなるリスクがあります。
土壁の上に石膏ボードや合板を張って、さらにその上にクロスを張る、という方法もあります。損傷が激しく凹凸が目立つ土壁でも平滑な下地をつくれるメリットがあります。ただし、土壁の上にクロスを張る方法よりも、工期や費用がかかることは心得ておきましょう。
いずれにせよ、クロス張りにすることで、本来土壁がもっていた調湿性や風合いなどは損なわれてしまいます。
・同じ左官材料で塗り直す
おすすめなのは、同じ左官材料で塗り直すこと。土壁のダメージを補修しながら、自然素材ならではの温かみの宿る空間になります。土を広い面積に塗ると、夏は涼しく、冬は寒くならないというメリットもあります。
具体的に補修工事では、凹んだ箇所に下地となる土を塗り込めます。そして下地が乾いたあと、左官材を薄く、何回も塗り重ねていきます。塗りと乾燥の工程を何回も繰り返す必要があるので工期と手間がかかりますが、昔ながらの土壁を復活させることができます。古民家や町家のリノベーションでは、スタンダードなやり方です。
■実際に土壁リフォームを業者に依頼すると費用はいくら?
では実際に土壁のリフォームをプロに依頼すると、費用はどのくらいかかるのでしょう。
・クロスに張り替える場合
ひとくちにクロスといってもグレードはさまざまで、もっとも安価なビニル壁紙は700円/㎡〜。同じクロス張りでもグレードの高い繊維系壁紙では、2800円/㎡〜と4倍もの開きがあります。
一般的には1000円台前半のものがよく使われ、さらに下地調整費用をプラスして1500円/㎡あたりが相場と考えておくとよいでしょう。
・土壁に塗り直す場合
土壁は手掛ける職人や、建築会社によって金額は異なりますが、一般的に13,000円/㎡〜(※)ほどになります。
※下地調整/ラスモルタル塗り含む
(金額は「積算資料ポケット版 リフォーム編 2025」を参照)
価格だけで比較するとクロス張りのほうが圧倒的にコスト面では安いのですが、土壁の良さは再現できません。
またクロスは一般的に5〜10年で張り替えが必要になりますが、土壁(漆喰)は適切な室内環境なら30年はもちます。
土壁がもつ調湿性や風合いを考えると、長い目で見た時には土壁でリフォームするほうが、結果的に費用対効果は高いと言えます。
もちろん民宿やゲストハウスのような短期間だけ利用する建築でも、壁がクロスよりもほんものの左官壁であるほうが、利用者の満足度は高いことでしょう。
■まとめ
土壁は、調湿性、蓄熱性、防火性、耐火性などに優れ、多彩で自然な風合いを楽しめる魅力があります。古い土壁は現在では貴重で、傷んでいても、古民家や町家のリノベーションのプロに依頼すれば修復することが可能です。
株式会社美家は、京都内での古民家や町家など古い住宅のリフォーム・リノベーション経験が豊富です。京都の古民家や町家を知り尽くしており、とりわけ技術力が必要とされる、昔ながらの竹木舞の土壁のリフォームも得意としています。
古い住宅はもとより、ゲストハウス・民泊などの宿泊施設やカフェなどの店舗も、既存の土壁を生かして唯一無二の空間にリノベーションすることが可能です。
高いクオリティで理想のリノベーションをかなえますので、リフォームでお悩みの方は、まずは美家にご相談ください。
<美家の今までの施工実績はこちら>
■京町家づくりのゲストハウスのリノベーション@京都市伏見区
https://www.b-house.co.jp/blog/collection/158084
■「京のお宿」ゲストハウスのリノベーション@京都市内
https://www.b-house.co.jp/blog/collection/157795